ほんとうに少しだけ。


わたしは感じたその胸の痛みを頭から追い出し、鞄から、3分の1ほど中身が残っているペットボトルを取り出した。わたしが毎年楽しみにしているスイカジュース。

こんな疲れた日に、今年はじめて飲むなんて、しかもそれがプレゼントだったなんて、ちょっとしたミラクルだ。颯太くんには感謝しなきゃ。えれなとふたりにしてあげて、貸し借りなしになったかな。

ペットボトルを手に持ってかざすと、差し込む夕日に照らされ、スイカの赤いポップな色みが、少し切ない大人の色になった。わたしは写真を取ると、インスタグラムにアップした。


『うれしい色で、心が満たされた。エナジーチャージ完了! 』