「あの、あの…さっきのミシンのこともう一回よく教えてもらえますか」

「ああ、あれね」

「あと、渡辺さんの代のときの衣装のこと、もう少し聞きたいです」

言いながらわたしはさっさと靴を履き替えた。

「えれな、わたし、渡辺さんに聞きたいことあるから、先帰るね」

「え?」

えれなと颯太くんの声がはもった。

「ごめんね、待っててくれたのに。でも、聞けるときに聞いとかないと、あれだから……」

わたしは渡辺さんの腕をひっぱるようにして外に出た。

視界の端に驚いているえれなと、なぜだかふてくされた顔をした颯太くんが見えたけど、わたしはとにかくその場を離れなきゃという一心だった。

そのままずんずん歩き門を出たあたりで、突然渡辺さんが笑い出した。

「もう大丈夫。ふたりとも追いかけてこないから」

 はっとしてわたしは渡辺さんの腕を離す。

「あ! ごめんなさい、わたしなんだか失礼なこと……」

「いやいや、大丈夫。……ミシンのことは口実だよね」

探るような顔で見る渡辺さんに、思わず頭を下げた。