「おー、ならよかった」

顔がほころぶのをとめられない。自分でもめずらしいと思うくらい自然にニコニコしてしまうわたしを見て、颯太くんもおかしそうに笑った。

「わかりやすいなー、理緒。こどもか」

からかわれても、いつもみたいに恥ずかしくはならなかった。ただただ、うれしい気持ちだけでうきうきしていた。

でも、ふと、あれ? と思う。颯太くんはこのジュース、独特な味って言った。そんなに好きじゃないのかな? だったら、なんでわざわざ買ったんだろう。

そう思って颯太くんを見上げたけれど、笑っている颯太くんと目が会ったら恥ずかしくなって、目をそらしてしまってなにも聞けなかった。

まあ、いいや。とにかくうれしい。すごく幸せな気分。それだけで十分。
そのまま自然な流れでふたりで下駄箱に向かうと、そこにはえれなと渡辺さんが立っていた。

「やっときたな」

「理緒、待ってたんだよ」

そういうえれなの顔がまた少しこわばっていることに気づいた。まさかとは思うけど、わたしと颯太くんのこと、変なふうに勘ぐってないよね。

えれなにへんに誤解されたくない。わたしは頭をフル回転させた。

「渡辺さん!」

あわてて呼びかけたら、思いがけないほど大きな声が出てしまった。渡辺さんだけじゃなく、颯太くんもえれなもびっくりした顔でわたしを見る。

「なに?」