そのとき、階段のほうから賑やかな女子の笑い声が聞こえてきた。聞き覚えのあるキラキラした声。

えれなだ。わたしは時計を見た。ちょうどチア部の練習が終わって帰るころだった。

わたしはあわててイヤホンを外すと、颯太くんに押し付けるようにして返した。颯太くんが驚いた顔で、わたしを見る。

「だいたいわかったから、大丈夫。デザインのこと、考えておくね」

「あ! 理緒!」

声のする方を見ると、えれなが笑顔で駆け寄ってくるところだった。

でも、わたしと颯太くんが一緒にいるのを見て、その笑顔が少しだけひきつったことにわたしは気づいた。
わたしは一歩うしろに下がり、颯太くんと距離をとる。

「おつかれ! なんか結局ひとりでやらせちゃってごめんね。大丈夫?」

「いまはまだ大丈夫。実際に作業する段階になったら、お願いするから」

えれなはわたしの傍らに立つ颯太くんを気にして言った。

「なにか打ち合わせ? わたしもう練習終わったから、いまからなら一緒にできるよ」

「いや、打ち合わせってほどのことじゃないから」