「僕らのときはみんなイラストとか、ロゴで、写真プリントなんてなかったなあ。目立ちそうだね」

「あ、もしかして、卒業生……」

応援団の振り付けや選曲はそれぞれで考えて、個性をだしていくけど、それなりに形や伝統があって、毎年OBが指導に来ているという話しを聞いたことがあった。

「そう。二年前の卒業生の渡辺です。渡辺樹」

渡辺さんは誰でも知っている有名私大の二年生だった。

「宮下です。よろしくお願いします」

「衣装係、大変だよね。俺の代のときなんて衣装係の子がいそがしすぎてテンパっちゃってさ、俺たちまで徹夜で手伝ったんだよ。おかげで本番当日ヘロヘロで」

「えー、ほんとですか」

そんな話をしていたら、颯太くんの声が飛んできた

「こらー、理緒! さぼってないで、撮影しろ!」

「さぼってない…」

「言い訳すんな! 早く!」

「なんだよ颯太、意外とスパルタだな」

渡辺さんがそう言って笑った。わたしはとりあえず渡辺さんに会釈すると、練習する颯太くんたちの撮影を始めた。
振りの練習をする姿、互いに注意しあう様子、真剣な顔、うまくいって笑いあう姿、集中する横顔、後ろ姿……。

しばらく撮影してから、教室のすみで撮った写真を確認する。