「俺は理緒ならできると思うから、言ってるんだからな」
まっすぐに見つめられて、うなずかないわけにはいなかった。
颯太くんは「じゃあな」と言って帰っていったけれど、わたしはその後少しの間ぼんやりと立ち尽くしていた。
しばらくして、はっと我にかえり、颯太くんがぐしゃぐしゃにした頭をなんとかととのえる。あのとき感じた手の重さが、颯太くんが感じている歯痒さなのだと思った。
『理緒にしかできない』
『理緒ならできると思うから、言ってるんだ』
颯太くんが言ってくれた言葉がわたしの心にじわじわと染み入ってくる。
わたしにできること、わたしにしかできないこと……、本当にそう思ってるかな。
衣装係を引き受けたわたしへのリップサービスかな。でも、それでもいいや、とそう思えた。せっかくやるんだもの、後悔しないようにしよう。少なくとも颯太くんたち応援団の足をひっぱらないようにしよう。わたしは強くそう思った。