小走りで下駄箱に向かいながら、わたしは心臓の鼓動がドクドクと早鐘をうつように鳴っているのを感じた。

さっき振り向いたとき、紺野颯太の横顔が目の前にあった。多分、わたしのスマホをのぞきこもうとして、背の高い彼は腰を折るようにしていたんだろう。

彼がそばに来たことにも全然気づかなかった。いつからああしていたんだろう。   
わたし、へんなことしてないよね?

ぶつぶつひとりごと言ったりしてなかったかな。

あんなに近くにいたなんて……、わたし、汗くさかったりしてないよね。

話の途中でいなくなったりして、変なやつだと思われたかな。

いろいろな思いが浮かんできて、なんだか心配になったけれど、それらを振り払うように頭を横にふった。きっと紺野颯太はなにも気にしてないんだから、心配する必要なんてない。

わたしがどんな写真を撮ったのかってことに興味があっただけ。

ちょっと男の子と接近したくらいで、こんなに動揺してしまう自分の不格好さがほんとうに嫌になってしまう。

「理緒! ちょうどよかった、一緒に帰ろ!」

下駄箱で靴をはきかえていると、後ろからえれなが抱きついてきた。
わたしはよろけるのをぐっとこらえて、えれなを受け止める。