「表だけ、サテンにすればいいでしょう。裏地はコットンにする。だから、両方買う」

「おー」

わたしがコットンの同色の布を見つけて、上の棚に手をのばすと、背の高い颯太くんが楽々と取り出してくれた。そして、ふたつの布の巻きものをひとりで持ってくれる。

学校のミシンで刺繍がいれられるので、ミシン用の刺繍糸も買った。

刺繍はシルバーがいいと颯太くんはしつこく言ってたけど、グレーはあっても光るシルバーはなくて、渋々白で代用することを了解してもらった。

布地を買い終えてひと息つこうと、モールの中にあるコーヒーショップに入った。わたしはグレープフルーツジュース、颯太くんはカフェモカを頼む。

毎日学校で会っているし、衣装のことでよく話し合ってはいるけど、こうして向かい合って座るのは初めてだった。

わたしは正面から颯太くんを見るのが恥ずかしくて、ストローで氷をいじっていた。