わたしははっと我に返った。ちょっと優しくされたことを思い出して、見とれてしまうなんて、ほんとにわたしってばばかみたい。衣装係として一緒にいるんだから、その仕事をまっとうしなくては。わたしは気合いを入れ直して、布が並んだ棚を見つめた。

青軍だから、青い布を探すわけだけど、比較的大きめの手芸店だから、ひと言で青い布と言ってもたくさんある。

薄い水色から、濃紺まで、そして普通のコットンやサテン、ベロア風まで色も素材もさまざまだ。

「俺、これがいいな」

熱心に布を見ていた颯太くんが棚から出してきたのは、スカイブルーのサテン地だった。

「汗……」

「なに」

「汗を吸わないから、サテンはどうかなあ」

「あのさ、そういうババくさい理由で、俺のアイディアを否定するのやめてくれる?」

「ババ…」

「これ、目立つじゃん。これにさ、2016 青 とかってシルバーで刺繍いれたりしたら、すごくよくない?」

「………」

わたしはその布を手にとった。確かに少しだけ光を反射するサテンは、体育祭のグランドで映えるだろう。つやつやのスカイブルーのはちまきをたなびかせて、応援する颯太くんの姿はさぞ人目をひくだろうなと思った。

「わかった」

同系色のコットン100%の布を探しはじめたわたしに、颯太くんが不満げな声をあげた。

「わかってないじゃん、俺はこの光るやつがいいの」