それにしても……えれなと颯太くんの間でそんな話になっていたなんて、全然知らなかった。

だいたいえれなもその後も、そんなそぶり見せなかったし……。

「だからね、しばらくは理緒のそばにいるのがつらかったの。だから、期末の勉強も一緒にできなかった」

「えっ?」

「まあ、ちょうどいい機会かな、とも思ったんだよね。わたし、なにかあるとすぐ理緒に頼っちゃうじゃない? 理緒も助けてくれるし。でも、自分でできるようにならないと、ダメだなって」

わたしは驚きでもう声もでなかった。えれながそんな風に考えていたなんて…。

「おかげでひどい成績で、まいったけど」

えれながおどけた顔をしてみせた。無理して笑ってくれているのがわかった。

「なんか、いろいろずるいことも考えたよ。理緒が颯太のことどう思ってるかわからなかったから、颯太が理緒に失恋すればいいって思ったの。理緒、颯太みたいなタイプ苦手そうだしさ」

いつも太陽みたいだと思っていたえれなですら、そんなことを考えたりするんだとわたしは衝撃にも近い気持ちを抱いていた。
目の前のえれなはおだやかに話してくれているけれど、その表情を見ていたら、一度は本当に苦しんだんだということが伝わってきた。

「……」

「でも、やっぱりふたりをずっと見てたら理緒も颯太のことが好きなんだなって気づいちゃった。理緒、しょっちゅう目で追ってるんだもの、颯太のこと」

「うそ」

「うそじゃないよ。ずーーーーっと見てたよ」

 わたしは恥ずかしかった。
そんな自分に気づいていなかった。