ひとりで泣いていたわたしを、颯太くんはなぐさめようと思ってくれていただけで……。

「わたし、びっくりしちゃって。衣装係やってるから、颯太と理緒がだいぶ仲良くなってるのはわかってたけど、まさかあんな風になってるなんて思いもしなかったから」

「ちがうよ、えれな。そんなへんな意味じゃないの」

「まあ、あのあと戻ってきてからも、理緒はいつもと変わらないし、颯太も相変わらずちゃらちゃらしてるし。なんなんだろ、このふたりってずっと思ってたの。でも、なんか理緒には聞きづらくて……、だから颯太に聞いたの」

「なにを?」

「なんで、理緒と手をつないでたの?って」

さすがえれなだ。聞くとなったら、ストレートになんの計算も駆け引きもなく、正面からぶつかっていくんだね。

「そしたら、颯太さ、なんて言ったと思う?」

「……」

「『おれ、じつはさ、総合優勝したら理緒に告白しようと思ってたんだよ。でも、負けたじゃん。だから、告白できなくなっちゃって、くやしくてつい手を握っちゃったんだ』って」

体育祭の夜のことだ。手をぎゅっと握られたとき、『どうしてこんなことするの? 』って疑問だらけだったこと、よく覚えてる。まさか、そんな風に思っていたなんて。

「理緒のこと好きなの? って聞いたら、好きだよってさらりと言いやがったのよ、あいつ!」

「それいつ?」

「体育祭の夜。帰るときに、颯太つかまえて」

「うそ……」

「ショックだったよー。あっけなく、失恋決定。しかも親友にとられちゃうなんて」

「とってないよ!」

わたしは必死で打ち消した。