「インスタもうぜんぶ捨てるっていって、携帯捨てたんだって? でも、インスタは理緒がアカウント削除しないかぎり、ずっと存在してるから。理緒のそのデータが全部ダメになってたとしても、インスタ上で存在し続けるから……」

えれなに言われて、思わず「そっか……」とつぶやいた。

「当たり前でしょ。理緒ってばへんなところ、天然なんだから」

「ごめん……」

わたしはついあやまった。

「でも、まあ颯太もパニックになって、すっかり全部消えちゃったんじゃないかって半泣きだったけどね。携帯見つけてからそれに気づいて、脱力してたよ」

「颯太くん……」

なんだかその颯太くんの様子は、想像ができた。こんな時なのに、少し笑えた。

そして、やっぱりまた何を話していいかわからなくなって、沈黙が流れた。

何か言わなくちゃと思うのに、頭も口も動かない。

その沈黙をやぶったのはえれなだった。

「もう!」

えれなはいらいらとした顔で言った。

わたしはびくっと身体を縮めた。なにを言われてもしょうがないと思っていた。

「理緒、このままでいいの?」

その言葉の意図がわからずに、わたしは「え?」と聞き返した。

「わたしと、このままけんかしたままでいいの? ずっとしゃべらないで卒業までいくつもりなわけ?」

えれなは本気で怒った顔をしていた。

「だって、えれな、すごい怒ってるから、もうわたしとなんて話したくないんじゃないかと思って……」

そう言うと、えれなはいらいらしたように立ち上がった。