わたし次第? 

わたし次第で、この状況がよくなるなんてことがあるの?

えれなが許してくれるなんてことが、本当にあると信じていいの?

すがるような思いで顔をあげたわたしは、強い視線を感じた。

わたしを心配そうに見つめる颯太くん。
その向こう、反対側の橋のたもとに、立っている制服姿の女の子がわたしたちふたりを見ていた。

それは……えれなだった。

はっとする。距離があるから、えれながどんな表情をしているのかは見えない。でも、わたしと颯太くんがふたりでいるのをじっと見つめているのだけはわかった。

「えれな……」

「え?」

わたしの言葉に颯太くんもえれなの方を見た。

「あ……」

なんてタイミングが悪いんだろうと思った。
インスタグラムのことを知られてしまってこじれてしまったのに、さらに颯太くんとふたりでいるところを見られるなんて。

わたしがぐずぐずインスタグラムを手放さないでいるから。

あの時アカウントを削除してしまっていれば、こんな風に颯太くんに説得されることもなかった。 

そしたら、ふたりでいるところをえれなに見られることもなかった。

やっぱり捨てなきゃ。消してしまわなくては。

わたしはスマホを取り出した。

「もう、全部いらない」

「理緒?」

「全部なくなっちゃえばいい」

わたしはそう言うと、大きくふりかぶって、用水路に向かって投げた。

「!」

颯太くんが隣で仰天しているのがわかった。

くるくると回転しながら弧を描いてとんでいったスマホは、数メートル先の水の中にぽちゃんと落ちて、消えていった。

「これで、ぜんぶデータが消えて、わたしのアカウントも消えた」

颯太くんは橋の手すりにつかまって、わたしのスマホが消えたあたりをじっと見ている。

「だからもう無理。インスタのことはあきらめてください」

わたしはそう言うと、元来た道を駆け出した。

えれなと颯太くんを残して、すべてを置き去りにして、家に帰った。