「どうでもいい存在のやつなんて、どこにもいないよ」

「きれいごと言わないでよ! 自分に自信がもてなくて、自分なんていてもいなくてもいいんだって思っちゃう人間がここにいるのよ!」

「理緒……」

「あのインスタを堂々とクラスのみんなに見てもらえるような、そんな人間だったら、最初からインスタなんてやってない! ちょっとインスタ見たくらいで、わかった気にならないでよ!」

わたしの肩をつかんでいた颯太くんの手から力が抜けた

「もうインスタはやらないし、写真集もお断りする。もういやなの。誰にも見られたくないの」

そういうと、わたしは颯太くんを残して立ち去ろうとした。

「いいのかよ、ほんとにそれで」

今まで聞いたことがないくらい、悲しみを帯びた颯太くんの声にわたしは思わず立ち止まった。

「理緒だって、ほんとは誰かにわかってほしいから、インスタやってたんじゃないの? 誰かと心でつながりたいから、やってたんじゃないの?」

「……」

「いま、インスタやめて、学校にも来ないで、自分の中に閉じこもったら、理緒ほんとにひとりぼっちになるぞ」

「もう手遅れだよ」

わたしは振り絞るような声で言った。

「インスタなんかやったせいで、わたしはもう全部なくしちゃった」

颯太くんの手が再びわたしの両肩をつかんだ。

「手遅れなんかじゃないし、何もなくしてなんかない。全部理緒しだいだ」