「だから、おれ、最初は理緒のこと全然わかんなかったよ。同じクラスになっても印象薄くてさ、同じ学年にこんな子いたっけって思った」

わたしは唇を噛んだ。そんなこと言われなくてもわかってる。
颯太くんだけじゃなく、はじめて同じクラスになった人はみんなそう思ってるだろう。

「だから、理緒がステラだってわかって、すごく驚いたよ。いっつもポーカーフェイスでクールな理緒がさ、悩んだり、迷ったり、喜んだり、泣いたりしてるって、わかったから。でも、辛そうなときも愚痴とか毒吐いたりとかはしないし、なんていうかちゃんと理緒なりにすすもうとしてる。すごいいい子なんだなって思ったし、インスタのおかげで理緒を近くに感じた」

わたしは目を閉じた。こみあげてくるいろんな種類の感情を抑えこみたかった。

「インスタを通して、理緒を理解できた気がした」

まるで励ますかのように颯太くんが、わたしの肩に手を置いた。

「自分の気持ちを出すのは、恥ずかしいかもしれないけど、悪いことじゃない。あのインスタ、みんなに見てもらったら、みんな理緒のこと好きになるよ。これがわたしだって、堂々とやればいいじゃん!」
「もうやめてよ!」

思わず颯太くんの手を振り払い、叫んだ。

「理緒……」

「颯太くんにはわかんないよ!」

自分でも思いがけないほど大きな声が出た。

「いつもみんなの中心にいて、言いたいことなんでも言えて! 嫌われるかもしれないって怯えたことなんてないんでしょう? 自分がどうでもいい存在かもしれないって思ったこと一度もないんでしょう? そういう人には、わたしの気持ちはわからない!」