小さな用水路にかかる橋を渡った先にあるパン屋さんまで、もう少しだった。

わたしは橋のたもとで振り向いて言った。

颯太くんも立ち止まった。

わたしが怒った顔でにらみつけても、颯太くんは目をそらそうとしなかった。

「いつまでついてくるの?」

「理緒がちゃんと話してくれるまで」

颯太くんは当たり前だろうという顔で言った。

「話すってなにを」

「いまの理緒の状況がどうすればよくなるかとか、どうすればインスタは再開してくれるのかとか」

わたしはわざとらしくため息をついてみせた。

「インスタ再開なんてしたら、状況は悪くなるだけだと思う」

「そうかな」

わたしを落ち着かせるかのように、颯太くんはゆっくり言葉を発した。聞く耳を持たないで、自分の中にひきこもろうとするわたしの手を話すまいとするかのように、ひとことひとこと丁寧に語りかけてきた。

「ちゃんと、えれなと話してないんだろ、どうせ」

わたしは顔を背けた。

「理緒は自分の気持ち言わないもんな。いつも周りの空気を読んで、雰囲気をこわさないように気をつかってる」

「…………」