「あそこはわたしの大事な場所だったの! 誰も知ってる人は見てないって思うから、正直な自分の気持ちをのせてきたの! それなのに…こんな近くにいる人に、ずっと黙って見られていたなんて、それがどれくらい恥ずかしいことか、颯太くんにわかる?」

「それは、ごめん。理緒。でもおれ、理緒だって知らなかったし」

「わたしも颯太くんに見られてたなんて知りたくなかった」

颯太くんは絶句していた。いまさらこんなことを言ってもしょうがないのはわかってる。でもえれなとのこともあって、わたしの頭の中は負の感情でいっぱいになっていて、誰かにぶつけずにはいられなかった。

「いまこうやってそばにいるのも恥ずかしいよ。だから、お願いだから、放っておいてよ。ひとりにしてほしいの……」

わたしはそう言うと早足で颯太くんのそばから立ち去った。

歩きながら、ふとデジャブだと思った。

こんな風に『ひとりにして』と捨て台詞を言って、颯太くんを拒絶したことは、何度目だろう。

いつも颯太くんは心配して、わたしのそばにいてくれようとするのに、わたしは途中でシャッターをおろすようにしてしまう。

でも、もうきっとこれが最後になるだろう。

颯太くんもわたしに愛想を尽かして、離れていくにちがいないんだ。