「それにあなたのインスタグラムが心の支えになってる人だっていると思うの。毎日ポストを見るのを楽しみにしてる人がたくさんいると思う」

心の支え……。そんな人が本当にいるんだろうか。

わたしのポストを待っててくれる人なんているんだろうか。

「写真集まではまだ時間があるから。すぐに結論をだそうとしないで」

「……」

「一度そのお友達とちゃんと話しができるといいわね」

「……はい」


わたしは電話をきったあとに考えた。

えれなとまた話し合う…、そんなことできるんだろうか。

『もう、理緒のことなんて、信じられないよ! 』

そう叫んで、私に背を向けて去っていたえれなの姿を、わたしは何度も夢で見た。

時には、追いかけて腕をつかみ、泣いて謝った。

あるときはとおせんぼをするように押し戻して、一回ちゃんと話を聞いてと強気に説得したりもした。

わたしがどんな態度で向かって行ったところで、その結果はいつも同じだった。
えれなは顔色ひとつ変えず、わたしに冷たい一瞥をくれて、立ち去っていく。

その後ろ姿を呆然と見送り、わたしにできることなどもう何もないのだと毎回思い知らされて夢は終わった。
そのとき感じる途方もない喪失感に飲み込まれ、深い深い暗闇に落ちていくような絶望が現実になったらと思うとぞっとした。

えれなともう一度ちゃんと話をしたいという思いはわたしにだってある。

でも、もしわたしがえれに向き合おうとしても、えれなに本当に拒絶されたりしたら?

決定的にもうすべて終わったのだとつきつけられたら?

その悲しさにわたしは耐えられるんだろうか。

わたしは最悪の事態になることを恐れ、現実と向き合うことができなかった。