「写真集のはなし、わたし、お断りさせてもらったらダメでしょうか」

受話器の向こうで横澤さんが絶句したのがわかった。

「あのアカウントがわたしだって分かった以上、写真集まで出したりしたら、友達とのことがもう取り返しのつかないことになりそうで、こわいんです」

「宮下さん……」

「一回お受けしたのに、本当に申し訳ないんですけど……」

横澤さんは黙っていた。多分すごく怒ってるんだろうなとわたしは思った。  
これだから女子高生は困るって思ってるかな。
仕事をなめてるって思ってるかな。
でも、いまのわたしにはどうしたって写真集をだす勇気なんてなかった。

「宮下さん、あのね」

横澤さんが話しだした。
予想に反して、優しい声だった。

「いまの状況はあなたにとって、すごく厳しいってことよくわかるわ。
正直、わたしも責任を感じてる。

あなたのアカウントを誌面にひっぱりださなかったら、こんなことにはなってないものね」
「……」

「でもね、お世辞でもなんでもなく、あなたのインスタグラムはとってもすてきなの。このまま終わらせちゃうなんて、もったいなさすぎるわ」

「横澤さん……」

「宮下さんのポストがないとさみしいわよ。早く復活して、新しいポストをみたいなってファンのひとりとして思うわ」

「ファン?」

「そうよ、わたしあなたのあのインスタグラムのファンなのよ。あんなすてきな世界、もっとたくさんの人に知ってもらいたい」

そう言われて、わたしはぐっときた。