「なに?」
「おれも上で食べる」
颯太くんは購買部で買ったらしいパンの袋を持っていた。
わたしは立ち止まりため息をついた。
「やめて、こないで」
「なんで」
「なんでも」
「なんで、いいじゃん」
黙ってしまうと、さらに颯太くんは言った。
「なんでも話聞くし」
正直なことを言うと、本当は颯太くんにそばにいてほしかった。颯太くんにすべてを打ち明けて、相談できたらどれほど楽になれるだろうかと思う。
でも、それはできなかった。
颯太くんがいま、そばにいてあげるべき相手はえれなだ。わたしじゃない。
いまのこの状況で、そばにいられたら、逆に苦しくなるだけだ。
「ひとりになりたいの。わからないかな」
心と反対の言葉を無理に口にするせいで、口調が乱暴になる。
「お願いだから、ほっといて」
そう言って後ろを振り向くと、颯太くんは傷ついた顔をしていた。
「ごめん」
そう言って、ぱたぱたと階段を降りていってしまった。
わたしはその足音が聞こえなくなるまで、颯太くんの後ろ姿を見送っていた。
颯太くんが見えなくなると、わたしはとぼとぼと階段を上り、屋上のドアを開けた。
日のあたらないコーナーのところに座り込み、持ってきたお弁当を広げる。
でも、食欲がない。
口に押し込んでも、味がしない。
さっき自分が発した言葉を思い出す。
『お願いだから、ほっといて』
なんであんな風にしか言えないんだろう。
心配して来てくれる人に、どうしてあんな言葉でしか伝えられないんだろう。