たしかにお母さんにとっても、わたしはよくわからない娘だと思う。

もともと口数が少ないし、学校のこともあまり話さないし。

「昔から大人の言うことをよく聞いて、手のかからない子だったんです。いまでもやることはちゃんとやりますし、心配することはほとんどないんですけど、何を考えてるのか、あまりわからなくて……」

「お母さん」

全然写真集とちがうことを言いだしたお母さんに、わたしは恥ずかしくなって袖をひっぱった。

「リアルタイムで見られると恥ずかしいだろうけど、いまみたいに後からなら大丈夫でしょ?」

と、横澤さんが私に言った。

確かに。いまどんなことを感じたか表現しているから、それをいちいち親に見られるのは恥ずかしすぎる。
「過去の写真を作品として見せる写真集になれば、きっと理緒さんも見せるのに抵抗ないんじゃないかなって思います。思い出になっている頃に見られるのであれば、きっと恥ずかしくないんじゃないかな」

「じゃあ、写真集になるのを待ちます。親としては今が心配なんですけど……」

お母さんのその言葉で、写真集の話は一気に動きだした。

わたしも覚悟を決めていた。写真集を出すことで、何が変わるのか、何も変わらないのか、全然見当もつかない。

でも、私の世界が広がることで、もしかしたらわたしは変われるかもしれない。自分らしくいられる場所を作り出すことができるかもしれない。

一歩を踏み出してみよう、そう思っていた。