「颯太くん!」

「なに!」

「ジャンプする!」

「え?」

わたしの頭の上で颯太くんがぎょっとするのがわかった。

「いくよ!」

「わー、やめろ、理緒、それは危ないって」

「大丈夫! 子供のときはできた!」

「無理だって、やめろ! やめてくれ!」

あわてて颯太くんがブランコの勢いを弱まらせようとするのがわかった。

でも、わたしは飛びたかった。

自分の足で思い切り反動をつける。

「理緒、やめろ!」

颯太くんの声を無視して、ブランコが一番高いところに振り上がったとき、わたしは空中に飛び出した。

それは一瞬のことのはずなのに、飛んでいるわたしにはあたりの景色が停止して見えた。

わたしの身体は弧をえがいて飛び上がり、二メートルほど先の土の上に落下した。
イメージではちゃんと着地する予定だったけれど、勢いがつきすぎてわたしは前のめりにころころと転がった。

地面にうつぶせに倒れたわたしは、しばらくじっとしていた。

擦った手の平や、膝小僧がじんわりと痛い。

地面についている頬に小さな砂利があたって、やっぱり痛い。

わたしはゆっくり身体を起こした。

……痛いけど、とんでもないけがはしてない。

擦り傷くらいで、骨を折ったり、大出血したりみたいな、致命的なけがはどこにもない。