「颯太くん……」
「うす」と、颯太くんは空いている隣のブランコに座った。
「どうしたの? なんでここに?」
「ん? 遊びに行った帰り。通ったら、怪しい女がひとりでいて、なんだ? って思ったら理緒だった」
「うそ……」
「ほんと。おまえ、こんな暗い公園にひとりって、まじであやしいからな。通報されるぞ」
颯太くんは少し息切れしてた。不思議になる。
「走ってたの?」
「あ…、まあちょっと急いでて。でもいいんだ、もう」
「大丈夫?」
颯太くんは大丈夫大丈夫と言いながら笑った。
「久しぶりじゃん」
「そうだね」
そうだ、颯太くんに会うのは夏祭り以来だった。
そのことに気づいたとたんに、わたしは少し気まずくなった。
あの日以来、わたしは意図的に颯太くんを避けていた。
これ以上好きになってはいけないと、あえて会わないように気をつけていたのだ。それなのに…またこうして偶然会ってしまう。
どうしてだろう。
どうして、こんなに偶然が多いの? わたしの頭の中は疑問でいっぱいだったけれど、颯太くんはブランコに座るには長過ぎる足をもてあましながら、ゆらゆらとブランコを揺らしている。
「で、理緒はどうした。家出でもしたか」
「まさか……。考えごとしてただけ」
「なに、考えごとって」
「いろいろ」
颯太くんが笑った。