状況がうまく理解できず、黙りこんでしまったわたしに、横澤さんがあわてて言った。

「大丈夫、こちらでも万全な体勢でフォローできるようにするから。ただ、今のままだと写真が足りないから、いざとなったら写真を撮り下ろしてもらう必要も出てくると思うの。……ちょっと考えてみてくれる?」

なんだか横澤さんの話してることが、自分とはまったく関係ない遠い話のことに思えて、わたしは最後の方はうわの空だった。

ちょっと考えさせてくださいと、やっとの思いでそれだけ言って、電話を切ると、わたしはベッドのなかに潜り込んだ。

自分の写真だけでできてる写真集が出版される。

そんなこと、今まで生きてきて、一度も考えたことのないことだった。インスタグラムだって、ほんの軽い気持ちで始めただけだ。なのに、写真集だなんて……。

横澤さんと話したときに浮かんだ疑問が、再び胸にわきあがる。

わたしの写真だけでできてる写真集なんて、一体誰が買うんだろう。