屋台が立ち並ぶ参道を抜けると、颯太くんがトイレに行きたいというので、コンビニに向かった。

外で待っている間、わたしは水風船の写真をとった。

颯太くんがわたしの好みをわかってくれてうれしかったのに、素直にその喜びを表現することができなかった。あの時のうれしさを早く記録したくて、わたしは焦れるような気持ちでシャッターを切った。

コンビニ前の駐車場で、店の蛍光灯の灯りに照らされた水風船。そのままだとちょっと殺伐と見えてしまうので、水風船の色がより濃く出てくるようなフィルターをかけた。そして、できるだけ、水風船によってトリミングし、駐車場の背景や奥に見える並んだ雑誌がわからないようにする。

『この感じ、すごーく好き。ほんとに大好き』

写真をアップしようとしたとき、颯太くんがコンビニから出てきた。

「ごめん」

「ううん、大丈夫」

わたしは『シェア』をタップしてから、スマホをしまった。

と、颯太くんが驚いた顔をした。

「なに?」

「いや、なんでもない」

そういって、浴衣のたもとからスマホを取り出した。
画面を見るとちょっと驚いたような、慌てたような顔をした。「なんか、親から連絡が入ってる、ちょっと待って」と言って、少しわたしから離れた。

なにやら操作して、戻ってくる。

「大丈夫? 急用?」

「あー、全然。全然大したことなかった」

そう言いながら、なぜか颯太くんはニヤニヤしていた。