「やっぱりダメかあ」

わたしがため息をつくと、颯太くんが腕まくりをしながら言った。

「追いかけちゃダメなんだよ。動きを読んで、向かってきたところをちゃちゃっと」

「やだ、なんの話し」

「金魚すくいだろ」

「女の子のことみたい」

「金魚ですー」

颯太くんが水の上に乗り出すようにして、金魚に狙いを定めた。
ポイを水面ぎりぎりをすべらせるようにして、並んで泳いでいた二匹を一気にうつわにいれた。

「すごい」

「まだまだ」

勢いにのった颯太くんは、また一匹とった。薄い紙が少しよれてきているのがわかって、限界かなと思ったけど、颯太くんはあきらめてなかった。

その視線の先にいるのが、出目金だとわかってわたしはは思わず颯太くんの腕をひっぱった。

「あんな大物はもう無理じゃない? 破けちゃうよ」

「大丈夫」

そして、颯太くんは言葉どおり、出目金が水面近くにあがってきたところをみはからって、さっとすくってしまった。

「すごい!」

「ま、こんなもんだろ」

わたしがぱちぱちと手を叩くと、颯太くんは思いっきりドヤ顔をしてみせた。