わたしは颯太くんと話していたせいで、神様に何を伝えるか考えていなくて焦った。
あわててお賽銭を投げ、鈴を鳴らし、手をあわせて頭を下げる。あせったわたしが思いついたのは『これからも、このままいられますように』という言葉だった。
颯太くんとえれながうまくいくといい、なんて思っているつもりでも、結局こうして颯太くんとふたりでいる時間がもてるとやっぱりうれしい。私を好きになってくれないのはしょうがないとしても、せめて時々こんな風に話せたらいいなと願ってしまうのが正直な思いなのだった。
……ちょっとやましいところもあるけど、求めたのは現状維持だけ。ずいぶん欲がないなあって自分でも笑える。
でも、高校に入学してから、はじめてと思うくらいに一学期は充実していた。物理的にも精神的にも大変だったけど、衣装係をやれたのは大きかった。想像していた以上に、いい思い出になった。それはやっぱり、衣装係をすることで颯太君の近くにいれたから、そう思えるんだと思う。
やっぱり、あのときは幸せだったなあと、わたしは隣を歩く颯太くんをこっそり見上げた。うん、やっぱりこのままこんな風にそばにいられたらいいなあと、わたしは思う。
颯太くんが何か聞きたそうな顔でこちらを見た。わたしはあわてて目をそらしながら「なに?」とたずねる。
「……まあどうせ、教えてくれないからいいや」
その言葉に思わず笑ってしまう。だから、教えてあげた。
「現状維持をお願いしたの」
「え? なにそれ」
わたしはくすくす笑って、答えははぐらかした。
恋人とかそういう特別な存在じゃなくてもいい。好きな女の子の友達というポジションでもいいから、こうして時々颯太くんのそばにいて、話したり笑いあえたりしたらいいなっていうささやかな『このままいられますように』なんだってこと、自分でははっきりと意識していたのだった。
あわててお賽銭を投げ、鈴を鳴らし、手をあわせて頭を下げる。あせったわたしが思いついたのは『これからも、このままいられますように』という言葉だった。
颯太くんとえれながうまくいくといい、なんて思っているつもりでも、結局こうして颯太くんとふたりでいる時間がもてるとやっぱりうれしい。私を好きになってくれないのはしょうがないとしても、せめて時々こんな風に話せたらいいなと願ってしまうのが正直な思いなのだった。
……ちょっとやましいところもあるけど、求めたのは現状維持だけ。ずいぶん欲がないなあって自分でも笑える。
でも、高校に入学してから、はじめてと思うくらいに一学期は充実していた。物理的にも精神的にも大変だったけど、衣装係をやれたのは大きかった。想像していた以上に、いい思い出になった。それはやっぱり、衣装係をすることで颯太君の近くにいれたから、そう思えるんだと思う。
やっぱり、あのときは幸せだったなあと、わたしは隣を歩く颯太くんをこっそり見上げた。うん、やっぱりこのままこんな風にそばにいられたらいいなあと、わたしは思う。
颯太くんが何か聞きたそうな顔でこちらを見た。わたしはあわてて目をそらしながら「なに?」とたずねる。
「……まあどうせ、教えてくれないからいいや」
その言葉に思わず笑ってしまう。だから、教えてあげた。
「現状維持をお願いしたの」
「え? なにそれ」
わたしはくすくす笑って、答えははぐらかした。
恋人とかそういう特別な存在じゃなくてもいい。好きな女の子の友達というポジションでもいいから、こうして時々颯太くんのそばにいて、話したり笑いあえたりしたらいいなっていうささやかな『このままいられますように』なんだってこと、自分でははっきりと意識していたのだった。