「……」

上を見上げて悩む颯太くんの様子が微笑ましかった。颯太くんなら、いちいち神様に伝えなくても、優先して見守っててもらえそうだなと思った。

「理緒は去年、何をがんばるって伝えたの」

そうたずねられて、わたしは考えた。
高校に入学して、最初の夏休みだった。

あのころはインスタグラムをはじめて二ヶ月くらいで、それまでぽつぽつと増えていたフォロワー数が、一気に増え始めたころだった。

最初は戸惑っていたわたしだったが、ちょっとした充実感やうれしさを感じたのも事実だった。

自分の居場所を見つけたような気がして、ほっとするような気持ちもあった。

だから、『インスタグラム、もう少し続けてみます』って、ほんとうにささやかな報告をしたんだった。

「なに」

黙ってしまったわたしに颯太くんが言った。

「……言わない。神様だけに伝えたことだから」

「そういうのは、えれなは知ってるの」

「え?」

「えれなは理緒が何を願ったかとか、知ってるの?」

「……」

どうして颯太くんがそんなことを聞いてくるのか、真意がつかめなくて、なんて答えていいのかわわからなかった。くちごもるわたしに、颯太くんは言った。

「えれなにも言わないんだ」

そう言われると、わたしがえれなに秘密を持っていることがばれてしまったようであわてた。

「たいしたことじゃないから」

「逆でしょ」

「……」

颯太くんがじっとわたしを見ているのがわかった。自分の気持ちを見透かされそうでこわくなる。
「たいしたことあるから、言わないんじゃないの」

「……」

正直、この話題を続けたくなかった。わたしの嫌な部分が颯太くんに知られてしまいそうでいやだった。
タイミングよく、わたしたちの番になった。