だいぶ日が落ちて、薄暗いなか屋台のライトや八幡様の提灯に明かりがともされた。お祭りに来ると、なんだかタイムスリップしたような、異空間に飛び込んでしまったような気分になる。エンドレスで流れているお囃子も、場の雰囲気を作るのにひとやく買っていて、特有の高揚した空気があたりに満ちていた。

颯太くんと歩いていると、すれ違う女の子が振り向いて目で追っているのがわかった。甚兵衛を着ている男の子はいるけど、浴衣の男の子は珍しい。それに、颯太くんの浴衣姿はすてきだった。背が高くて姿勢がいいせいか、堂々として見えて、あまり感じたことがなかった大人っぽさを感じた。

それに濃紺の浴衣がわたしの薄い水色の浴衣と色合いの相性がよくて、なんだかうれしい。

颯太くんが買ってくれたあんず飴を食べながらわたしたちはお参りの列に並んでいた。

このお祭りは八幡さまのお祭りなので、来たら必ずお参りする。

家族で来ていた子供のころからの、恒例行事だ。

「おれ、いままでお参りとかしたことない」

「え? ほんとに?」

夏祭りにきたらお参りするのは、わたしにとっては当たり前のことだったから、かなり驚いた。

「なんかいいことあるの」

「……、気持ちの問題かなあ。毎年お参りしてるから」

「お賽銭っていくらにする?」

「わたしはいつも100円だけど、うちのお母さんは500円とか」

「げ、まじか。それで何か願いを聞いてくれるの?」

「お願いを聞いてもらうんじゃなくて、今まで無事に過ごしてきたことのお礼を言いなさいってお母さんから言われてる。いつも、見守ってくれてありがとうございますって。で、これからこういうことをがんばりますってお伝えすれば、うまくいくように見守ってくれるんだって」

「ふーん……。応援団も終わっちゃったしなあ。俺、なにがんばるかな」