そんな風にいろいろ考えていたのに、待ち合わせ場所にえれなはなかなかこなかった。わたしの次に現れたのは、颯太くんだ。驚いたことに、颯太くんも濃い紺色の渋い浴衣だった。
まさか颯太くんが浴衣で現れると思っていなかった。思わずじっと見てしまう。
「なに。なんか変?」
わたしがあまりにじっと見つめたせいだろうか、颯太くんが困ったように言った。
「ううん、そんなことない」
「そっか? 着慣れないから、すーすーして落ち着かないんだよ」
そう言うと、颯太くんはわたしを上から下まで見て言った。
「理緒は似合うな、浴衣。大人っぽくていいいじゃん」
わたしはとたんに恥ずかしくなった。
「颯太くんも、似合ってるよ」
やっとの思いでそれだけ言うと、下を向きながら、たずねた。
「颯太くん、友達は?」
「ん?」
「友達を連れてくるって、えれなが……」
すると、颯太くんはなぜか少しあわてたようだった。
「あ、その予定だったんだけど、ダメになっちゃったんだよな」
「え? そうなの?」
だったら、わたしもやめておけばよかった。その思いが顔にでてしまったらしい。
「なんだよ、俺の友達に興味あった?」
「ちがう、そういうんじゃなくて」
あわてて答えていたら、LINEが入った通知音が鳴った。
【ごめん、理緒。昨日の夜、寝冷えしちゃったみたいで、風邪ひいちゃった。声が出ないの。だから、今日無理】