夏祭りの前日、えれなから電話があった。

「明日、晴れそうでよかったね! なんかね、颯太も友達連れてくるみたいだよ」

「友達? だれだろ」

「学校の子じゃないってー。だから、理緒も絶対来なきゃだめだよ」

「え」

「男子ふたりとわたし、なんてやだもん。誘ってきたのは、理緒なんだし、絶対にきてね」

もしかして、えれなはわたしがどたキャンしようとしてることをわかってたのかな…とちょっとひやっとした。

「わかった? 絶対行くんだからね」

「わかってるよ、大丈夫」

電話を切ったあとに、わたしはあわてて浴衣を出した。去年作ったばかりの薄い水色にあじさいの花があしらわれた浴衣。高校生になったお祝いにと、おばあちゃんからのプレゼントだったのだけれど、落ち着いた柄で大人っぽくてわたしはとても気に入った。着たい時にいつでも自分で着ることができるように何度も練習した。

だから、当日もわたしは自分で浴衣を着付けして、髪もあげて、準備した。
わたしは付き添いみたいなものだから、あんまりはりきってもしょうがないと思うのに、気持ちが浮き立つのを抑えられなかった。

えれなの浴衣がどんな柄かよく知っていた。白地に赤やオレンジのダリアのような花が描かれた、えれならしい明るい浴衣だった。多分えれなはゆるめのふわりとした感じのまとめ髪にしてくるだろう。女の子らしい柔らかさのあるスタイルはえれなをいっそうかわいく見せることを、えれな自身もわかってる。

わたしはそんなえれなが引き立つように、きゅっと下の方で小さくまとめるスタイルにした。わたしはおまけ。あくまでも、黒子。マネージャーみたいなもの。
そう考えて、あまりうかれしすぎないように、自分をいましめた。