「まだ途中までだけど。いい?」

「いい、いい! ありがと」

颯太くんはうれしそうにわたしのノートを持って自分の席に戻る。鼻歌でも歌いそうな勢いでノートを開いているのを見ていたら、やっぱりまた笑いがこぼれてしまう。

颯太くんの素直な反応を見ていると、なんだか優しい気持ちになる。

わたしは颯太くんのように、まっすぐにオープンに人に気持ちを表現することができないから、余計にその姿が魅力的にみえるんだろうな。あんな風に自然に自分を表現できたら、どれほど楽しいだろう。

前にもそんなことを感じたことを思い出した。

その時は、えれなに対して似たようなことを感じたんだ。

ふたりとも似た者同士なんだろうな。

颯太くんもえれなも自分をさらけだして、嫌われるんじゃないかって心配になったりすることってないのかな。

いままでずっと人気者のポジションで生きてきてるから、嫌われるなんて考えたこともないのかな。ずっと日のあたる場所で生きている人ならではの優しさや明るさが少しうらやましい。


そんなことを考えながら、つい颯太くんを見つめてしまっていた。
ふと顔をあげた颯太くんが「なに?」という顔で見る。


わたしは微笑んで、首を横に振った。