一番下から天井まで本で埋め尽くされているのは、どの書架も同じだけれど、やはりジャンルによって全然雰囲気が違う。女性向けの占いや美容の本が並ぶエリアはやっぱりなんとなくラブリーだし、経済や金融の本が並ぶエリアはひとめみた瞬間から近寄りがたい空気だ。

ふと見ると、料理本や手芸関連のムック本が並ぶエリアに、一冊だけ哲学っぽい本がぽつりと置かれていた。きっと誰かが借りようとしていたのに、置き忘れてしまったんだろう。わたしは元の棚に戻そうと手にとりかけて、思いついてスマホをとりだした。

雑誌のようなムック本が並ぶコーナーに、ぽつんと置かれたハードカバーの哲学書。いかにも居心地が悪そうなその雰囲気に、なんだか仲間意識を感じた。


『いるべき場所にいないって、落ち着かない。いるべき場所が、あるのかもわからないけど』


そうコメントをそえてポストした。
ふと気がつくと十分以上、歩き回っていた。わたしはその本を、背表紙についた番号をたよりに、あるべき書架に戻した。