なのに。
それなのに。
なぜか、わたしはいろんなところで颯太くんと遭遇した。
例えば、ショッピングモールの帰り道とか。
夏休みの宿題をやるためにでかけた図書館とか。
昼間は暑いから、夜に出かけた飼い犬の散歩の途中とか。
どうしてここに? みたいな場所で、遭遇するのだ。
一番最初は、えれなとかき氷を食べに出かけたショッピングモールの帰り道だった。
ふたりで一番大きなサイズのかき氷を食べて、頭が痛くなってしまって、それがおかしくて笑いながら歩いていたら、後ろからチリンチリンと音がして、自転車に乗った颯太くんが現れたのだ。
わたしはてっきりえれなが颯太くんと約束していたのかと思った。
「なんだ、ふたりで会う予定だったの? えれなってば、言ってよー」
しかし、そう言うわたしにえれなは首を横に振った。
「約束してないよ、別に。偶然。ね?」
えれながしらっとした顔でそう言うと、颯太くんもうなずいた。
こんな風に約束もしていないのに会うなんて、ひかれあうふたりにしかおこらない奇跡みたいなことが本当にあるんだなって、わたしは単純にそう思った。
ふたりにしてあげたほうがいいかなと、いろいろ理由をでっちあげてその場を立ち去ろうと思ったのに、えれなが離してくれなかった。
結局三人でお茶することになったけど、なんだかぎくしゃくしてしまって、悪いことをしたなと思った。