「颯太くん、えれなに告白できたの?」
「え?」
「だって体育祭の前に言ってたじゃない、総合優勝したら好きな子に告白するんだって。あれってえれなにでしょ?」
颯太くんは目を丸くした。まさかわたしが気づいていると思わなかったのかな。
「颯太くんが告白したら、えれな絶対喜ぶはずなのに、さっきすごくつらそうな顔してた」
「あ……」
「何があったの? えれな、あんなに颯太くんのこと好きなのに、こんなのおかしいよ」
わたしはあまりにいつもと違うえれなに、動揺していたんだと思う。
ついそう口走ってしまった。とたんに颯太くんの顔色がかわった。
「えれなが?」
そしてしばらく考え込むと、踵を返し、颯太くんもまた校舎の中に戻ろうとした。しかし途中で引き返してきて、わたしに傘を差し出した。
「これ、使え」
「え、でも颯太くんは」
「おれが帰る頃にはやむだろ」
そういうと、パタパタと音を立てて走って行ってしまった。
いったいどうしたの?
ふたりの間に何がおきたの?
頭の中は疑問だらけだった。でも、その疑問をぶつける相手は誰もいなくて、どうすることもできなかった。
わたしは颯太くんが貸してくれた傘を颯太君の靴箱のところにかけると、何もささずに外に出た。もうすでに雨はやみつつあった。わたしは門をでるとき、校舎のほうを振り返ってみた。
いったい、いまふたりはどんな話しをしてるんだろう。
気になってしょうがなかったけれど、わたしの出る幕じゃないのはわかっていた。
わたしは振り切るように、足早に門の外に出た。