それからどれくらいたっただろうか、「理緒」と呼ばれて顔をあげるとえれながいた。

えれなの顔は告白を受けたあとのようには全然見えなかった。
あおざめて無表情で、まるで抜け殻のようだった。

「えれな? どうしたの?」

わたしが聞くとえれながは無理矢理笑顔を作って首を横にふった。

「なんでもない、大丈夫」

「全然大丈夫に見えないよ」

颯太くんと何かあったの? って聞きたかったけど、えれなからは何も聞かないでと拒絶する空気がぴりぴりと漂っていた。

「大丈夫。理緒、ごめん。悪いんだけど、先に帰っててくれる?」

わたしはあわててうなずいた。

「もちろん、大丈夫。先に帰るよ。雨がひどかったから、落ち着くのを待ってただけなの」

まるで言い訳してるみたいになった。

「……ごめんね」

えれなはくるりと踵を返して、行ってしまった。

「えれな……?」

わたしはわけがわからなかった。


どうしたの?
なにがあったの?
颯太くんは? 


聞きたいことはたくさんあったけれど、なにひとつ聞けなかった。

颯太くんに告白されたのだとしたら、えれなならもっとキャーキャー騒いでわたしに報告してくるだろうと想像していた。そのときは笑顔でうけとめなきゃって、おめでとうって言わなきゃって覚悟もしていた。

なのに、えれなのリアクションはまったく逆だった。