ある日のお昼のことだった。他の子と購買部にパンを買いに行ったえれなが、ふてくされた戻ってきた。

「理緒、聞いてよ! ひどいの、唐揚げパン、もう売り切れてた、早くない?」

購買部の唐揚げパンは人気があって、一番最初に売り切れてしまう。えれなもお弁当を持って来なかった日は唐揚げパンを楽しみにしているのに、今日はいつも以上に売り切れるのが早かったようだった。

「残念だったね。じゃあ、今日は何にしたの?」

「もう、頭にきたから何も食べない」

「え?」

「何も買ってこなかった」

思い通りにならないとすねてしまうのは、よくあることで慣れていた。わたしは笑いながら自分のお弁当をあけてみせた。

「わたし今日唐揚げだから、あげるよ」

「わ! 理緒ママの唐揚げ! おいしいんだよね」

「えれな、ラッキーだよ。今日はおいなりさんもある」

「え、すごい! おいなりさん好き好き。ちょうだい!」

わたしの食べる分も半分になってしまうけど、別にかまわなかった。えれなも当たり前のようにわたしのお弁当をのぞきこむ。わたしがお弁当のふたに、えれなの分をとりわけようとしたときだった。