でも、勘違いしちゃいけない。
調子にのるわけにもいかない。
わたしはそっと手を離そうとした。でも、颯太くんはそれを許さなかった。
逆に、わたしの手を握る颯太くんの手に、痛いほどぎゅっと力がこもった。
「ほんとに、ありがとな……」
わたしは颯太くんの手を握り返すこともできずに、ただただされるがままになっていた。
颯太くんはえれなが好き。
そうだよね?
なのに、どうしてわたしの手を握ったりするの?
衣装係をがんばったご褒美かな。感謝の気持ち、かな。
女の子の手を握るくらい、颯太くんにとっては大したことじゃないんだろう。