「なにやってんの」

そのとき、後ろから声をかけられて、わたしはあわてて涙をぬぐった。

颯太くんの声だ。

見なくても、颯太くんが教室の入り口に立っているのがわかった。

泣き顔を見られたくなくて、振り向くこともできずに、わたしはこたえた。

「みんなが花火やってるところを見てるの。青春って感じ」

「一緒にやればいいのに」

「見てるのが好きなの」

振り向かないまましゃべっていると、颯太くんがちかづいてくるのがわかった。


来ないで。
強くそう思ったのに、颯太くんは隣に立って一緒に下を見下ろした。


相変わらず女の子たちがきゃあきゃあ言いながら花火をやってる。
花火のパチパチいう音と、煙の匂いに包まれて、わたしたちはしばらく黙って外をみていた。
颯太くんがあまりになにも言わないでいるから、気まずくて、わたしは言った。