わたしはひとりで教室に戻った。蛍光灯に照らされた廊下は、青白い光の中で寒々しく見える。花火をやってるクラスメートたちの声がかすかに聞こえてくるけど、ついさっきまで自分がそこにいたとは思えないくらい遠くの出来事のようだった。

体育祭のにぎやかさを残すかのように、教室のなかは雑然としていた。乱雑に並んだ机のうえに、鞄や上着が無造作に置かれている。

と、教室には誰か応援団の団員が忘れたのか、青軍のはちまきがおちていた。

拾ってみると、踏まれたような跡があった。わたしはしわをのばしながら丁寧にたたみ、近くの机に置いた。何しにここに戻ってきたんだっけ? なんだか呆然としてしまって、少しのあいだ立ち尽くしていた。

ふと我にかえったとき、窓の外から、にぎやかな笑い声や、きゃっきゃっと騒ぐ女子達の声が聞こえてきた。わたしはみんなが花火をしている様子を見下ろした。

二階からその様子を見ていると、えれなを中心に輪が広がっていることに否が応でも気づく。えれなはやっぱり太陽みたいだなと思う。