「わお!」

えれながうれしそうに叫び、颯太くんは手にもっていた花火をえれなに渡してあげた。その一連の動きがスムーズで自然で、もう長くつきあっている恋人みたいだった。

「チア部も今日、がんばったもんな。おつかれさま」

「わたしたちのデモンストレーション見た?」

「見たよ、もちろん見た。すごかった」

そう言って、えれなを見る颯太くんの目は優しくて、えれなのすべてを包みこんでいるかのように見えた。
「ほんと? 応援合戦のあとだったから、緊張しちゃったよ」

「そうは見えなかったな」

「見せないようにがんばったの!」

そういって笑いあうふたりからは、きらきらとした幸せのオーラが溢れ出しているかのようで、そこだけが一段明るく輝いているかのようだった。

ほかのみんなも花火に火をつけ、シューッ、パチパチという音があちこちで響く。白い煙がたつなか、赤や黄色の光がきらめき、女子のきゃあきゃあいう声と重なって、一気にお祭りのような雰囲気になった。
えれなの花火の火が弱まりはじめた。

「あー、終わっちゃう」

火が消えていくのを、ふたりがじっと眺めている。何も話さずにひとつの花火をじっと見つめる様子があまりにさまになっていて、まるで映画のポスターのようだった。そこにいる全員がふたりに見とれてしまうほどだった。

「颯太! 次のもやって! もう、火、こわいよ」

甘えた声が言うえれなに、颯太くんが苦笑いしながらうなずく。

「はいはい。やりますよ、お姫様」

「やだー颯太ってば」と、えれなが笑う。

その笑顔がまぶしすぎて、思わず目を背けた。
わたしは黙ってその場から離れた。