わたしはさっき、総合優勝できなかったことにほっとしていた。それは、颯太くんの告白がながれたことを心のどこかで喜んでたからだ。

颯太くんがえれなに告白して、ふたりがつきあいはじめたら、颯太くんは今までみたいにわたしにかまってくれなくなるだろう。わたしはそれがさみしかったんだ。なんて勝手な人間なんだろう。あんなにがんばってる颯太くんを間近で見てきたのに。

そのとき、花火をやっていた女子からきゃっという悲鳴があがった。

花火に火をつけるためのろうそくが、なかなか立たないのだ。

「熱い!」

えれなの声を聞いて、颯太くんがすぐにかけつけた。

「だいじょうぶか?」

「颯太ー、ろうそく全然立たない」

「ああ、いいよ。俺やるから」

そういうと、えれなの手からろうそくとマッチをとり、ろうそくに火をつけた。ろうそく立てに見立てた空缶にロウをたらして、ろうそくをそっと立てる。

「よし」

と、颯太くんはつぶやくとえれなに言った。

「どれやる?」

「よくわかんないから、どれでも」

「よし」

颯太くんが無造作に一本選び、ろうそくの火に近づけるとすぐにシュワっと音がして、火花が吹き出した。