なのに。

紺野颯太はなにかというと、わたしとえれなに声をかけてくるようになった。

教室の移動のときとか、休み時間中のおしゃべりに平然とまぎれこんだりしてくる。
えれなたちとおしゃべりしているとき、わたしはたいてい聞き役だ。

「へー、そうなんだ」「ふーん」なんて相づちをうちながら、聞いていることがほとんど。で、気づくと紺野颯太がわたしの隣に座って「へー」「ふーん」なんて、わたしの真似をして相づちをうっていたりする。

「もう、颯太、勝手に話に入ってこないでよ」

えれなが笑いながら言う。紺野颯太がわざと女の子っぽく言うから、みんなおかしくて笑ってしまうのだ。

そうやってひと笑いさせると、紺野颯太はいなくなる。しつこくないところがさわやかで、女の子たちはみんなまんざらでもない気持ちで紺野颯太がいなくなったことを少し残念に思うのがわかった。どうしてあんな風に自然に振る舞えるんだろう。人気者だから、自然でいられるのかな。自然でいられるから人気者なのかな。