「始業式の日とかすごかったから、わたしも撮ったよ。理緒は?」

「撮ったかなあ」

「えー、理緒ってば、散ってから撮ってもしょうがないでしょ」

けらけらと笑うえれなに、紺野颯太がくすりと笑った。えれなが素早く反応した。

「なに?」

「いや、そういえば教室で、よく理緒—! って呼んでる声がするなって思って。ほんと仲良いんだな」

「だって、親友だもん。ね、理緒?」

のぞきこんでくるえれなに、微笑んでうなずいた。

会話はえれなと紺野颯太の間で交わされはじめた。写真のことから話題がそれてほっとしたけれど、真ん中にはさまれたわたしはなんだか居心地が悪い。どうしたものかと思いながら、そっと隣を歩く紺野颯太を盗み見た。

紺野颯太とは二年生になって初めて同じクラスになったけど、一年のときからその存在は知っていた。
背が高くて、顔が小さいっていう日本人離れしたスタイルでよく目立つ。しかも気さくで、話しやすいから、女子にも人気があった。名実ともに、学校の人気者だ。

「理緒もチア部なの?」

突然、紺野颯太がわたしに質問してきて、わたしははっと我に返った。

「ち、ちがう」

「部活は?」

「理緒は手芸部にいたけど、やめちゃったんだよね」

かわりに答えてくれたえれなの言葉にわたしはうなずいた。

「俺は理緒に聞いたのに。お前は保護者か」

「お前とか言われる筋合いないんだけど。いきなり呼び捨てにしてるし」

えれなは口調は怒ってるけど、まんざらでもない顔してる。

これが別の男の子だったら、もっと本気でイライラしてただろうけど、相手が紺野颯太だからえれなも悪い気はしないんだろう。