そのうちあたりは暗くなって、すっかりよるになった。吐き出した息が白く染まる。

そろそろ帰らなきゃ、また怒られる……そう思って、立ち上がろうとした時だった。駅から出て来た同じ制服の男女に、目が釘付けになった。

遠子と彼方くんが、肩を寄せ合うようにして歩いていく。遠子は同じ学区に住んでいるので駅で会ったことも何度もあったけれど、彼方くんがこの町にいるのは初めて見た。

彼方くんが部活の帰りに遠子を家の近くまで送るのだろうか。もしかしたら、わたしは知らなかっただけで、毎日そうしているのかもしれない。そう考えて、かっと胸が熱くなった。

わたしがいる場所とは違う方向へ彼らが向かって行くのをいいことに、思わずじっと目で追ってしまう。そして、気がついてしまった。

――手をつないでいる。

当たり前だ、二人が付き合い始めてもう二ヶ月以上も経っているんだから、手くらいつなぐだろう。

そんなことは分かりきっていたはずなのに、自分でもびっくりするほどにショックを受けていた。学校で二人が一緒にいるのを何度も見かけたことがあったけれど、いつも着かず離れずの距離だったし、手をつないでいるのなんて見たことがなかった。

きっと学校では、周りの目を気にして、必要以上に触れ合わないようにしているんだろう。でも、学校から離れたこのあたりでは、毎日あんなふうなのかもしれない。

誰かに握りしめられているかのように心臓が痛い。それなら見なければいいのに、どうしても視線を逸らすことができなかった。