その日の帰りは、電車を降りたあとも家には向かわず、駅前で時間をつぶしていた。

今日は県外の大学に通っているお兄ちゃんが帰ってくる日だ。朝から嬉しそうにしていたお母さんが、お兄ちゃんの頑張りを褒めて、それに比べて遥は、と小言を言ってくるのが目に見えるようだった。お兄ちゃんが帰省するときはいつもそうだ。

ただでさえ彼方くんのことで落ち込んでいるときに、進路のことであれこれ言われるのは耐えられそうにない。だから少しでも家にいる時間を短くしたかったのだ。

商店街をあてもなくぶらぶら歩いたり、服屋に入って冬物の服を見たり、本屋で雑誌を立ち読みしたりしていたけれど、何をしても気が晴れることはなかった。何にも気を引かれないし、何も欲しいと思えない。

こんなんで生きてる意味あるのかな、と唐突に思う。

趣味も特技もなくて、将来の夢もなくて、ただぼんやり毎日を過ごしているだけ。こんなわたしは、生きている意味なんてないんじゃないか。

だからといって死にたいとか思うわけではないけれど、今死んだところで別になんにも後悔もしないし、わたしが死んだって誰かが困ることもないだろう。

誰にも必要とされない、自分でさえ自分の必要性が分からない、無意味な存在。それがわたしだ。

だんだん身体から力が抜けていって、歩く気力もなくなった。ちょうど近くにあったバスターミナルのベンチに腰かけて、ぼんやりと前を行き交う人々を眺める。