怒り、悲しみ、自己嫌悪、複雑な感情が胸の中でぐちゃぐちゃに混ざりあって、濁流のように一気に押し寄せてくる。真っ暗闇の中にいるような息苦しさ。

そのとき、ポケットの中でスマホが震えた。無意識に取り出して画面を見ると、『天音』という名前が表示されている。彼からのメッセージが届いたことを知らせていた。

その瞬間、暗闇に一筋の光が射したように、ふっと天音の笑顔が思い浮かんだ。途端に空気が軽くなったような気がして、呼吸が楽になる。

そうだ、どんなに嫌なことがあっても、天音に会えば、彼と何気ない話をしていれば、忘れることができる。天音に会って、あの笑顔を向けてもらえれば。

そんな期待に震えた心は、次の瞬間には崖から突き落とされたような衝撃を受けた。

『ごめん、今日は行けなそう』

スマホを持つ手が力を失い、落としそうになって慌てて両手で支えた。続くメッセージを読む。

『委員会が入った。昼休みの予定だったんだけど、時間がかかるから放課後に変更になったって』

そんな、今日に限って。そう思ったけれど、委員会なら仕方がない。

わたしはなんとか気を取り直して、返信を送った。

『ならしょうがないね。今日はなしにしよう』

『ごめんね』

『ううん、気にしないで。また明日ね、委員会がんばって!』

やりとりを終えてスマホをポケットにしまってから、ぎゅっと目を瞑った。明るく返事をしたけれど、自分でも驚くくらいに落ち込んでいるのが分かる。

身体が重くて、周りに人がいないのをいいことに、ずるずると壁にもたれてうつむく。そのまま、昼休みが終わるぎりぎりまで、ぼんやりと床を見つめていた。