*
その日の三時間目は、物理の授業だった。
ただでさえ理系科目は苦手な上に、昨日なかなか寝られなくて遅くまでSNSを見ていたせいで頭がぼーっしていて、授業に全く集中できない。
頬杖をついてぼんやりと窓の外に目を向けて、グラウンドでどこかのクラスが体育の授業をしているのに気がついた。種目はサッカーで、ジャージの色から一年生だと分かる。
この時間に体育をしているのはどこのクラスだっただろうか、と考えて、一組だと思い当たった瞬間に、胸が高鳴った。彼方くんのクラスだ。
授業そっちのけでグラウンドに目を走らせる。そして、求めていた姿を見つけた。
彼はちょうどゲームに参加しているところだった。コートの真ん中あたりでディフェンスをしている。
相手チームの一人がパスを受け取りゴールに向かって走り出したのに合わせて、彼方くんも素早く踵を返して並走していく。そして、ドリブルの隙を突いてさっと右足を伸ばし、ボールを奪い取った。そのまますぐに相手ゴールに向かって走り出す。
速い、と息を呑んだ。誰もついてこられないくらいのスピードで、一気に駆け抜けていく彼方くん。陸上部ではいつも棒高跳びをしているけれど、走るのも速いんだ。
彼はそのままの勢いで一人走り続け、少しフェイントを入れてからシュートを打って、見事にゴールを決めた。わっと歓声が上がる。
「かっこいい……」
思わず声に出してしまった。慌てて前を見たけれど、ちょうど先生が黒板に数式を書きながらしゃべっているところだったので、ばれずに済んでほっとする。たぶん周りにも聞こえなかったはずだ。
その日の三時間目は、物理の授業だった。
ただでさえ理系科目は苦手な上に、昨日なかなか寝られなくて遅くまでSNSを見ていたせいで頭がぼーっしていて、授業に全く集中できない。
頬杖をついてぼんやりと窓の外に目を向けて、グラウンドでどこかのクラスが体育の授業をしているのに気がついた。種目はサッカーで、ジャージの色から一年生だと分かる。
この時間に体育をしているのはどこのクラスだっただろうか、と考えて、一組だと思い当たった瞬間に、胸が高鳴った。彼方くんのクラスだ。
授業そっちのけでグラウンドに目を走らせる。そして、求めていた姿を見つけた。
彼はちょうどゲームに参加しているところだった。コートの真ん中あたりでディフェンスをしている。
相手チームの一人がパスを受け取りゴールに向かって走り出したのに合わせて、彼方くんも素早く踵を返して並走していく。そして、ドリブルの隙を突いてさっと右足を伸ばし、ボールを奪い取った。そのまますぐに相手ゴールに向かって走り出す。
速い、と息を呑んだ。誰もついてこられないくらいのスピードで、一気に駆け抜けていく彼方くん。陸上部ではいつも棒高跳びをしているけれど、走るのも速いんだ。
彼はそのままの勢いで一人走り続け、少しフェイントを入れてからシュートを打って、見事にゴールを決めた。わっと歓声が上がる。
「かっこいい……」
思わず声に出してしまった。慌てて前を見たけれど、ちょうど先生が黒板に数式を書きながらしゃべっているところだったので、ばれずに済んでほっとする。たぶん周りにも聞こえなかったはずだ。