天音はいつでも柔らかくて優しい微笑みを浮かべて、静かに頷きながら、わたしの話を聞いてくれる。そして彼も、その日見つけたものや感じたことについて、ノートにびっしりと書いてきたものを見せてくれる。

それからお互いの話について感想を言い合ったり、窓の外を見てただぼんやりとしたりする。

飲み物は、甘いホットカフェオレが定番になった。冷たい風が吹く外から店内に入って天音と向かい合って座り、あかりさんが淹れてくれたカフェオレのカップを両手で握りしめると、身体の芯から溶けて解れていくような気がした。

長いような短いような時間が過ぎた後には、その日にあったつらいことなんてすっかり頭から抜け落ちて、心が軽くなっている。

家にいても学校にいても少しも落ち着けず息をつけないわたしにとって、天音と過ごす穏やかな時間は、なくてはならないとても大切なものになっていった。

「遥ちゃん、よかったらこれ運んでくれない?」

カウンターの内側にいるあかりさんから声をかけられて、今日も窓の外をぼんやりと見ながら天音の来るのを待っていたわたしは、慌てて「はい」と立ち上がった。

カウンターに向かいながら店内を見渡すと、さっきよりもお客さんが増えていた。注文の品を待っている人も数組いるようだ。