「まったくあんたは……どうしてそうなの? ろくに勉強もしないで追試になって、そのくせ反省ひとつしないで遊び歩いて。どうしてお兄ちゃんみたいに頑張れないの?」

お兄ちゃんと比べられたって困る、と叫び返したくなった。でも、そんなことをしたら、さらにお説教が長くなることは分かりきっているので、浴びせられる言葉にただ唇を噛んで耐える。

「お兄ちゃんは大学行きながら医師国家試験の勉強もしてるのよ? 夢に向かって全力で頑張ってるの。兄妹なのに、どうしてこんなに違うの? あなたにも出来ないはずないでしょ?」

お兄ちゃんは小さいときから勉強もできて、わたしとは全然違うのだ。それなのに、なんでわたしにまでお兄ちゃんと同じ能力を求めてくるんだろう? そんなのは無理に決まっている。

もう、わたしのことは娘なんて思わなくていいから、お兄ちゃんだけを自分の子どもとして可愛がって、好きなだけ期待してくれればいいのに。

外に出せない言葉が、どんどん心の中に降り積もって、ずっしりと重く沈んでいく。

「お母さんは自分の娘に、夢もなくただぼんやり生きてるだけの人になんかなって欲しくないの。遥にはね、お兄ちゃんを見習って、お母さんみたいに、一生を捧げてもいいって思えるような天職を見つけて、生き生きとした人生を送って欲しいのよ」

はい、はい、とわたしは何度も頷いた。耳にたこができるほど聞かされた言葉だけれど、聞き飽きたという顔なんてできるわけがなかった。